シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「何のことですか?」

エミリーはもったいぶった様子のレオナルドの横顔をじっと見つめた。

何を考えているのか、ずっと前を見据えている。



「私はあなたにこの話をするために、今回この国に来たと言ってもいい」


レオナルドのグリーンの瞳に、エミリーの戸惑う表情が映った。

意を決したようにレオナルドの口がゆっくりと動き、話し始めた。




「知ってるかい?・・・・あなたは“預言の者”だということ」



「預言の者って・・・何ですか?わたしは普通の娘で、たまたま偶然この国に来ただけです」



――わたしは、書斎の窓から落ちただけだもの・・・。

預言の者なんて、そんな大それた者ではないわ・・・。



「いいかい?これは本当のことだ。アランは“預言の者”だということを知ってるからこそ、あなたを手元に置いておきたいだけなんだ。彼が本当に愛しているのはマリア姫なのさ・・・。傍から見ていれば分かる。彼は“あなたを愛しているふり”をしているだけさ・・・昔から彼を知ってるからね。昨日、見ていてよく分かったよ。随分辛そうだった」


驚いたように見開かれたアメジストの瞳が、不安げに揺れている。

レオナルドは、膝の上でギュッと握られている拳の上に掌を重ね、落ち着かせるようにポンポンと軽く叩いた。



「その・・・預言・・って何ですか?」


「ギディオンに伝わる、古い預言書があるんだ。その中ほどのページにあなたのことが書いてある。私はその預言を確かめるために、シルヴァの屋敷に潜入し、あなたに会いに行ったのさ」



――この方は何を言ってるの?預言って、何?

それに、愛してるふりって・・・・。


アラン様が・・・?


あんなに優しい瞳も、あのキスも・・・全部ウソだって言うの?



「信じられないって言う顔だね。良いだろう、預言書を見せてあげるよ。そうすれば私の言うことが信じられるだろう。今夜私のところに来るといい」


「でも、わたし、警備が厳重で、夜は塔から出られません。それに・・・そんなもの、見たくありません」


レオナルドの視線を避けるように俯いて、言葉を絞り出した。

心臓がドキドキしている。


――シルヴァに攫われた時も、先祖から伝わる言い伝えがあったわ。

シルヴァはわたしのことをシェラザードの化身だと、“月の乙女”だって言ってた。

故郷では、占いなんていつも当たらないし、ましてや言い伝えなんて迷信のようなものだと思ってた。
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