シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「エミリーさん、ようこそ。お待ちしてましたわ」


貴賓館の食堂でマリア姫がにっこりと笑って出迎えてくれた。

夕暮れに見たオレンジのドレスではなく、濃紺の宝石が散りばめられたドレスを着ていた。

胸もとが深く開いてて、肩が出ていてとてもセクシーなドレス。


「お招き頂きましてありがとうございます」

「今夜は旅先で苦労もしましたけど、私の国の料理を作らせましたの。お口に合うか分かりませんけど、楽しんで下さいな」


マリア姫はエミリーが着席したのを確かめると、手をポンポンと叩いた。

すると、奥の扉がバッと開かれ、給仕係が料理の皿を手にし、次々に食堂に入ってきた。


「エミリーさん、あなたとゆっくりお話ししようと思って、料理は纏めて持って来させたの。さぁ、お召し上がりになって」


ニッコリと微笑み、マリア姫は優雅にスープを口に運んだ。

エミリーもスープを口に運んだ。途端に口中に広がるさわやかな酸味。

何で作られているのか分からないが、とても美味しくて、エミリーはスプーンが止まらなかった。



「エミリーさん、私、今日とても良いことがありましたのよ」


スープを飲み終わったマリア姫が自分でスープのお皿を脇に避けた。

給仕が来るのを拒んだため、こういうことも自分でしなければならない。



「何があったのですか?とても良いことみたいですね。お顔が華やいでて、とても綺麗です」


「そうなの。私あなたに言ったでしょう?アラン様のことを愛してるって」


「えぇ、聞きましたけど・・・それが何か関係があるのですか?」


本当は、マリア姫が言いたいことは、何となく分かっていた。

夕暮れに馬車から政務塔に向かった二人を思い返せば、おのずと答えが見えてくる・・・二人は、とても親密そうに見えた。


「今日、私アラン様と出かけたでしょう?そしたら、行く先々で、お祝いのお言葉を民から頂いたの。“ご婚約おめでとうございます”って」



思っていた言葉と違うことを言ったので、驚いて顔を上げると、テーブルの向こうからブラウンの瞳が反応を確かめるように、食事の手を止めてこっちを見ていた。


「皆さん知っているのね。アラン様の正室がもうすぐ決まるってこと。皆、私だと思ってるみたいで、銀細工のお店では綺麗なしおりのプレゼントまで戴いたわ。しかも、アラン様は否定も何もなさらなくて・・・私、嬉しくて」



「アラン様は・・・否定しなかったんですね」


「えぇ、漸く想いが叶えられそうなの。あの方を想い続けて良かったわ」


マリア姫は頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。
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