シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「今日の様子では、きっと明日の夜アラン様は私に愛を告げられて、伽をお命じになるわ。だから塔の中に入れてくださると思うの。だからあなたに塔の中に入れて貰わなくても大丈夫みたい。ごめんなさいね。入れるために随分考えてくださったのでしょう?」


「いえ・・・気にしないでください・・・」


「でも、あなたは今、正室のお部屋にいるのでしょう?私が側室の部屋では身分が合わないから、明日は私が正室の部屋を使うことになるわ。だから、あなたは別のところにいらした方が良いと思うの。そうね・・・ここで、貴賓館で過ごせばいいわ」


マリア姫は優しくにっこりと微笑んだ。

エミリーはラステアの珍しい料理の味も何も分からなかった。

ただひたすらマリア姫の話に相槌を打ち、懸命に微笑みを作り続けた。

早くこの場から逃げ出したい。

幸せそうなマリア姫の美しい笑顔を見たくない。


否定しなかったアラン様・・・。

それは、マリア姫との婚約を決めたということ。


わたしを想ってると言ってくれたアラン様。


大切だと言ってくれるアラン様・・・。


けれど、身分が違うから・・・



パーティー会場で御三家の方も言ってたじゃない・・・



最初から分かってたことじゃない・・・。




マリア姫は艶々とした頬でずっと一人で喋っていた。

今日あったこと全部を自慢げに話している。

最後にデザートを食べ終わってもそれは続き、解放された時には、エミリーの心は、もう疲れ切ってしまっていた。



「ご馳走様でした。とても美味しかったです」


「またご一緒しましょうね。あ、エミリーさん、そう言えば、レオナルドが用事があるそうよ。私が連れて行って差し上げますわ。此方よ」



暗く沈んだ表情のエミリー。嬉々とした表情のマリア姫。

エミリーの沈み込んだ様子を確認するたびに、胸に喜びが湧き上がって来る。


――これで、アラン様は私のもの。

アラン様は否定しなかったっていうのは、ウソを言ってないわ。

ただ、近くにいなくて、アラン様の耳に届いていないだけ。

耳に届けば否定するでしょう。

アラン様のこの方を想う気持ちは強いもの。


でも、これでこの方がアラン様から離れていけば、私のことを見てくださるでしょう。

あとは最後の仕上げをレオナルドに―――


彼は、何故かこの方を手に入れたがってるわ。


彼に誘惑してもらえれば・・・・。



コンコン―――



「レオ王子、私よ。エミリーさんを連れてきたわ」



『・・・入れ』
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