シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「え?何を言ってるんですか?」

「私は、本気だ。私ならあなたにそんな悲しい顔はさせない。必ず幸せにしてみせる。私とルーベンの国に来てくれ」


レオナルドのグリーンの瞳は真摯なもので、ずっと変わらない。


――この方、ずっと真剣な瞳でわたしに接してる・・・預言のことも、本当なのかもしれない。



「レオナルドさん、急にそんなことを言われても、困ります。わたし、今とてもそんなことは考えられません」


「そうか。分かった。今夜はもう遅い。あまり遅くなると、あなたの護衛がここまで踏み込んで来そうだ。塔の玄関まで送ろう―――お手をどうぞ」



レオナルドに連れられて貴賓館の廊下を歩いていたら、隣で何かブツブツと呟く声が聞こえてきた。

耳を澄ませてよく聞いてみると前方に何かがあるみたいで、それに対する文句を言っているようだった。

これでは計画がうまくいかないとか、祭りがどうのとか、彼女がどうとか言っていた。


「全く、何であそこに居るんだ?まさか、迎えに来たのか」

「レオナルドさん?さっきから何を言ってるんですか?」


「いや、何でもない。それよりも・・・今アランがそこに来ている。まるで、父親のようにあなたを心配してるんだな。塔で一緒に住んでるんだ。当たり前と言えばそうだな・・・」


レオナルドが指差す方に、背の高い銀髪の男性が手持ち無沙汰な様子で腕を組んで立っていた。

本当なら護衛が待ってる筈なのに、どうしてアラン様が待ってるの?

歩いてくる姿が目に入ったのか、スタスタと中に入ってきてレオナルドを軽く睨んだ。



「レオ、何故君が?」


「そう睨むな。そこでたまたま会っただけさ」


「アラン様、どうしてここに居るのですか?」


「決まっておる。遅いゆえ、君を迎えに参った。メイが“身支度した際、様子がおかしかった”と申したゆえ、余計に心配になった」


顔を見てほっとしたのか、アランの表情が柔らかくなっていった。


「エミリー、帰るぞ」


いつものように身体に腕をまわし、大切に包み込むようにして、塔へと歩き始めた。


「マリア姫との食事は楽しめたか?ラステアの料理を食べさせたいと申しておった。どうであった?」


「えぇ、とても美味しかったわ。マリア姫はお話が上手で、とても楽しかった・・・アラン様はこれから先、ラステアのお料理を何度も食べられますね?」



「そうだな・・・。もうその話を聞いたか?本日話したら、マリア姫も乗り気だった。私はもう決断した。父君も賛成するだろう。君も良いと思うだろう?」



「えぇ・・素敵なことですね」



嬉しげに話すアランの様子を見て、エミリーは哀しそうに俯いた。
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