シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「おはよう、エミリー」
「アラン様、おはようございます」
いつものように迎えに来てくれるアラン様。
いつもと変わらないキスをしてくれる。
わたしの幸せな時間。
わたしがここにいる理由をくれる時間。
でも、これも今日が最後・・・。
アラン様はきっと今夜、わたしにさよならを告げるわ。
“私はもう決断した”
昨日、マリア様と一日を過ごして、心を決めて・・・。
彼女を選んだのでしょう?
「エミリー、元気が無いな。具合でも悪いのか?」
「大丈夫です。何でもありません。さぁ、行きましょう」
エミリーは哀しい想いを振り払い、懸命に笑顔を作った。
今日一日は笑顔でいたい。
食堂に向かう階段も、この廊下も、思い出がいっぱい。
エミリーは使用人たちに、にこやかに挨拶しながら歩いた。
挨拶するたびに立ち止まりそうになる身体を、アランはグイッと引き寄せている。
「エミリー、いちいち立ち止まるでない」
「ごめんなさい。でも、きちんと挨拶したいの」
「全く、君は・・・困ったものだな」
食堂の前に来ると、待っていたかのように自動で扉が開けられる。
いつも不思議に思うの。給仕さんたちは、どうして来たことが分かるのかしら?
中に入ると、給仕ではなくてアラン様が椅子を引いてくれる。
最近はずっとそうしてくれてる。
王子様が椅子を引いてくれるなんてこと、これから先はもうないわ。
エミリーは感慨深く椅子に座った。
そういえば、初めてここに来た時はすごく緊張してたっけ。
王子様と初めての朝食・・・
今思い返しても、何をどう食べたのか、まったく覚えていないわ。
できれば、あの時に戻りたい・・・。
そうすれば、こんなに辛くないもの。
「エミリー、今日は月祭りだ。祀りの儀式は夕暮れから行う。シンディの舞いは19時頃だ。楽しみにしておれ」
「わたしも参加していいのですか?」
「無論だ。何を申しておる。君は私と参る。良いな?」
「はい・・・楽しみです。シンディさん、きっと綺麗でしょうね」
「君には敵わぬ・・18時に迎えに行く」
いつものように、額にキスをしてアランは食堂を出た。
政務塔への渡り廊下を歩き、執務室へと向かった。
長い廊下を進んでいると、執務室の扉の前に人が立っているのが見えた。
アランが近づいていくと、その人物は丁寧に頭を下げた。
「アラン様おはよう御座います」
「リックか、こんな早い時刻に何の用だ」
「はい。お話したいことが御座います」
リックは神妙な面持ちでアランを見た。眉間に刻まれた皺が更に寄せられ、いつもより深くなっている。
「入るが良い」
「アラン様、おはようございます」
いつものように迎えに来てくれるアラン様。
いつもと変わらないキスをしてくれる。
わたしの幸せな時間。
わたしがここにいる理由をくれる時間。
でも、これも今日が最後・・・。
アラン様はきっと今夜、わたしにさよならを告げるわ。
“私はもう決断した”
昨日、マリア様と一日を過ごして、心を決めて・・・。
彼女を選んだのでしょう?
「エミリー、元気が無いな。具合でも悪いのか?」
「大丈夫です。何でもありません。さぁ、行きましょう」
エミリーは哀しい想いを振り払い、懸命に笑顔を作った。
今日一日は笑顔でいたい。
食堂に向かう階段も、この廊下も、思い出がいっぱい。
エミリーは使用人たちに、にこやかに挨拶しながら歩いた。
挨拶するたびに立ち止まりそうになる身体を、アランはグイッと引き寄せている。
「エミリー、いちいち立ち止まるでない」
「ごめんなさい。でも、きちんと挨拶したいの」
「全く、君は・・・困ったものだな」
食堂の前に来ると、待っていたかのように自動で扉が開けられる。
いつも不思議に思うの。給仕さんたちは、どうして来たことが分かるのかしら?
中に入ると、給仕ではなくてアラン様が椅子を引いてくれる。
最近はずっとそうしてくれてる。
王子様が椅子を引いてくれるなんてこと、これから先はもうないわ。
エミリーは感慨深く椅子に座った。
そういえば、初めてここに来た時はすごく緊張してたっけ。
王子様と初めての朝食・・・
今思い返しても、何をどう食べたのか、まったく覚えていないわ。
できれば、あの時に戻りたい・・・。
そうすれば、こんなに辛くないもの。
「エミリー、今日は月祭りだ。祀りの儀式は夕暮れから行う。シンディの舞いは19時頃だ。楽しみにしておれ」
「わたしも参加していいのですか?」
「無論だ。何を申しておる。君は私と参る。良いな?」
「はい・・・楽しみです。シンディさん、きっと綺麗でしょうね」
「君には敵わぬ・・18時に迎えに行く」
いつものように、額にキスをしてアランは食堂を出た。
政務塔への渡り廊下を歩き、執務室へと向かった。
長い廊下を進んでいると、執務室の扉の前に人が立っているのが見えた。
アランが近づいていくと、その人物は丁寧に頭を下げた。
「アラン様おはよう御座います」
「リックか、こんな早い時刻に何の用だ」
「はい。お話したいことが御座います」
リックは神妙な面持ちでアランを見た。眉間に刻まれた皺が更に寄せられ、いつもより深くなっている。
「入るが良い」