シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
それに、御令息や、兵士たちの熱い視線も気になる。


――全く・・・母君もよりによってこんなドレスを選ばずとも。


「エミリー、寒くはないか?そのドレス、少々肌が出過ぎておる」

「ぇ・・?大丈夫です。会場にはかがり火が炊かれていますし、それにほら、こんなに長い手袋をしてますから」


エミリーは本当は少し寒かったが、アランが今にも上着を脱ぎそうなのを見て、慌てて平気そうな顔を作った。

会場には等間隔にかがり火が焚かれ、炎を揺らしながら客席を明るく照らしていた。

舞台の四隅にもかがり火が置かれ、中央にはお神酒と供物が並べられた祭壇が設置されていて、その両脇で榊がサワサワと夜風に揺れていた。

舞台の両脇には雛段席が設けられ、左側には国王と皇后が座っていて、右側の雛段席にはレオナルド王子とマリア姫が座っていた。


――皇后様の隣には椅子が二つあるけれど、一つはアラン様の席でしょう?もう一つはきっとパトリックさんの席ね。

えっと、わたしは何処に座ればいいのかしら・・・?


会場を見渡すと、客席の前列には招待された貴族方や各国の大臣方が品良く座っていて、会場の隅の方までずらりと置かれた椅子には御令息や御令嬢達の姿も多く見られた。

客席は後ろの方まで一杯の様子で、空いた椅子は何処にもなさそうだった。



「アラン様?客席はいっぱいのようなので、わたし、あそこの隅に立っていますね」


舞台の方の雛段席に向かおうとするアランの腕から手を抜いて、ウォルターのいる辺りを指差した。

入口近くのかがり火の横にウォルターが立っているのが見える。


「あそこなら、ウォルターさんも傍にいるから安心でしょう?」


「あそこ・・・?―――――待て!」


腕から手が零れ落ち、踵を返して動き出した身体を慌ててしっかりと抱き止め、アランは大きく息を吐いた。


「君は何を申しておる。全く・・・こっちに参れ。君を立たせるなど、そんなことは考えてもおらぬ」


アランは雛段席の上まで誘導すると、皇后の隣の席に座らせた。


「エミリーさん、こんばんわ。良かったこと。そのドレス、とても似合っていて綺麗だわ」


皇后がニッコリと微笑んで嬉しそうにエミリーに言った後、アランの方を見上げた。息子は少し渋い顔をしている。



「しかし、母君、少々肌が出過ぎております」


「良いのよ。このくらいの方が、エミリーさんには良いのよ」
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