シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
舞台の上にシンディが楚々と進み出た。

見たこともないような袖の長い白い衣を身に纏い、ヘアバンドが巻かれた長い銀髪は後ろで一つに纏められていた。

たおやかな音楽が流れ始め、シンディはメロディに載って口上を述べ始めた。

古語なのか、エミリーには何を言っているのか全く理解できないが、会場中の空気が柔らかなものに変わっていった。

口上を述べ終わり深く頭を下げると、ゆっくりと舞い始めた。


手が夜空に向かってヒラヒラと揺れ、シンディの銀髪がかがり火の炎につやつやと輝いている。

袖の長い衣は舞うたびに余韻を残し、たおやかに揺れた。


夜空では二つの月が徐々に重なっていき、星が煌く尾を引いて幾筋も流れていく。


この光景に会場中の人が息を飲み、声も出さずに見入っていた。

エミリーも美しい光景に心を奪われていた。


シンディの舞いは魔力を持ち、徐々に人々の心を絡め取っていく。

舞台上から目が離せず、会場中の心が一つになっていった。

その空気を感じ取った神官の祝詞が再び始まった。



「今こそ積年の願い、果たされん―――」



神官が朗々と最後の章となる祝詞を述べると、月はお互いに惹かれあうように動くスピードを増し、舞台上で舞うシンディの影が一つになっていく。


二つの月がぴったりと重なり合ったその刹那―――

目映いほどの光が辺り一面に広がっていった。

客席の人たちが皆眩しげに眼を覆い、舞台上のシンディは舞うのを辞め、神官も目を覆いながらも何とかお神酒を継ぎ、清めるように舞台の上に撒いていた。



「何だこの光は・・・?今まで、このようなことは一度も――――エミリー?しっかり致せ・・・エミリー!?」



掌の中でしっかりと包んでいた手の感触が、急に重くなり、ぐったりとしたものに変わった。

目映い光の中隣を見ると、今にも椅子から零れおちそうなエミリーの姿が目に入った。

寸でのところで身体を支え、椅子から下ろして膝の上に抱きかかえた。

その様子に気づき、すぐ近くにいた警備兵たちがアランの周りを囲むように集まった。

皇后が両手で口を覆い、青ざめた顔で叫んだ。


「エミリーさん!?」


「ぇえい、そこの警備兵、どかぬか!」


国王は椅子から立ち上がり、アランの傍まで行こうとしていた。



「アラン様!一体何が・・・エミリー様!?」



「エミリー?目を開けてくれ―――」



「誰ぞ、フランクを呼べ―――」
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