シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
石造りの部屋の中、大きなベッドの中に品の良い年配の男性が横たわっていた。

ベッドの脇には夫人だろうか、品の良い年配の女性と、二人の子供のような、若い男性が二人立っていた。

その後ろには大臣のような者が三人と、白いローブを来た者が一人立っている。

皆哀しそうな顔をしてベッドの中を覗き込んでいた。



「父上、しっかりして下さい」


「あなた・・・しっかりして。お願い、私を置いていかないで・・・」


夫人はごつごつした大きな手を握り、必死に呼びかけている。


「神よ・・いまこそ・・・約束を・・・・」


ブルーの瞳が薄く開き、ベッドの上でうわ言のように呟いた。

その微かに漏れる言葉を、子供達が哀しげに耳を寄せ、何とか聞き取ろうとしていた。


「父上、何ですか?約束で御座いますか?」


「何の約束ですか?」


若い男性が必死でリンク王の耳元で叫んでいた。

その光景を天から見下ろすシェラザード。隣には神が立っている。


「シェラザードよ、ほんとうにそれで良いのか?彼は共にありたいと願っておる。神としては彼のこれまでの功績をたたえ、是非願いを叶えたい」


「いいのです。彼は月に、私に縛られてはいけません。お願いです。彼の魂は、自由であって欲しいのです」

「本当に良いのだな?天に召されれば、もう二度と彼には会えぬ」


「私は彼を愛しています。だからこそ、彼を縛ってはいけないのです。お願いします」


「分かった。ならば、月は彼を呼びよせるように魔力を高めてある。それを留めるには、彼を一時的に縛り付けねばならぬ―――少し苦しいかもしれぬが、リンク許せよ」


神が手を一振りすると、リンク王の体が僅かに光った。


「これで彼の魂は月には来ぬ」

「ありがとうございます」


シェラザードはベッドの中で顔を歪めるリンク王の様子を心配げに見つめた。


「リンク様。あなたは、先祖の魂となって今後も子孫を、国をお導き下さい。月になど来てはいけません。私の後を追ってはなりません」



「シェラ・・ザ・・ード・・・なぜ・・だ・・私は・・・ともに・・・」


リンク王の瞳が僅かに動いた後、しっかりと堅く閉じられ、二度と開くことは無かった。瞳からは涙が一筋流れ落ちていた。



「父上!」

「王様!」

「リンク様!」



婦人と子供たちが、亡骸の上にすがりつき号泣している。

大臣たちも後ろで哀しげに俯き、目頭を押さえていた。
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