シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「レオ王子、私は夢を見ているのかしら?これは一体何が起こってるのでしょう」


マリア姫は反対側の雛段席から、緊迫感溢れる様子を見て、動くこともできずにいた。

レオナルドも同じ様子で、椅子に座ったまま前かがみになって膝の上に肘を預けて、顎を手の上に乗せた姿勢でじっと見入っていた。


「どうやら大丈夫そうだな」


レオナルドはエミリー本人の意識ではないが、とりあえず体が動いたことに安心したのか、ふぅっと安堵の息を漏らしていた。



「マリア姫、今、彼女の身体にシェラザードが舞い降りている。これは、長年この国の巫女が成そうとして、成せなかったことだ。近年ではもう護国のための祀りとしているが、始まりは、神話の天使シェラザードの魂を月から呼び戻すための儀式だったのさ」


「あなたは、何故そんなことを知っているの?」



マリア姫は訝しげな表情でレオナルドを見ると、レオナルドはグリーンの瞳を輝かせ愉快そうに言った。



「調べたのさ。この国に伝わる預言と史実を。今、ひとつの預言が果たされようとしている。面白い、実に面白い。こんな場面に遭遇出来るとは―――そう思わないか?マリア姫」


「そうですか?私は反対に、怖いと感じています・・・レオ王子、その、預言とは何ですの?」



遠慮がちに聞いてくるマリア姫の顔を見つめ、レオナルドは一瞬迷ったような顔になった。


「そうだな・・・・今、見てることがそのまま書かれてるだけのことだ。それ以上は、マリア姫といえど、言えないな」


レオナルドは愉快そうに言うと、雛段席から降りてアランの方へ向かった。

舞台の方にいるパトリックが呼ばれている。

シンディの身体を離し、一言言うと頭を撫でて舞台から降りていった。






政務塔の階段を上っていく4人の人の影が壁に長く映っている。

前に背の高い影が小さな影に寄り添うように伸び、後ろには二つの影が付かず離れず、一定の距離を保って前後に伸びていた。

パトリックは、隣にいるレオナルドを不思議そうにみていた。



「レオナルド殿、何故君までここに来るんだ?」


「私は見届けたいんだ。リンク王とシェラザードの物語を。私はあの神話が好きでね。あの月が・・・自分が信じていたことが、違うとは・・・少なからずショックを受けているんだよ。リンク王はここにいるんだろう。是非、お会いして、結末を知りたい」


レオナルドは前を見ながら愉快そうに微笑んだ。
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