シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
“暫くは外出しない方が良いわね。今日は何ともならなかったけど、今度あんなことがあったら、どんな騒ぎになるかわからないもの”

そう言ったエレナの表情は真剣だった。

家に帰った後、ジャックにも園芸店での出来事を話したら、考え込むように腕を組んだ後、暫く外出を控えることに賛成した。

二人ともエミリーのことを一番に考えてのことだった。



異世界から帰って来た娘は、天使の力を持ち、女神かと思うほどに美しくなっていた。

我が娘ながら昔から綺麗だったが、一層綺麗になった気がする。

娘を守らなければいけない。



エミリーは二人の考えに賛成し、たまに庭に出るくらいで、あれから全く家から出ずに退屈な日々を過ごしていた。


ギディオンの国にいたときは、何もすることが無くても、毎日それなりに充実していた。


――わたし、城の中で何してたのかしらね?全く退屈では無かったわ。

そういえば、自分で言うのもなんだけど、結構波乱万丈な日々を過ごしていたような気もするわ・・・。



“この世界に呼ぶために、既に力を分けてあります”



――ねぇ、アラン様?

もしかして、アラン様は最初から知っていたの?

わたしに天使の力が宿ってるってこと。

だからあまり外出するなって、人目につかないようにって言ってたの?


でも、今となっては確かめることもできないわね・・・。




リンリン・・・リン・・。


カリカリ・・・カリカリ・・・



『みゃぁ・・みゃぁ・・・』



ドアをひっかく音と可愛い猫の鳴き声が聞こえてきた。



「シャルルなの?」


『みゃぁー』


エミリーがドアを開けると、綺麗な銀の毛並みを艶めかせ、シャルルが優雅に入ってきて、エミリーの足元に甘えるように体をすりよせてきた。


「シャルル・・・おいで」


ねぇ、シャルル・・・わたしね、この色と同じ銀の髪を持った人を知ってるのよ。

その人は遠い国の王子様で、いつも無表情で、氷の王子様って呼ばれてるの。

わたしも最初は何て怖い人なのかしらって思ったわ・・・。

だけどね、そうじゃないの。皆が知らないだけで、ほんとうは思いやり深くて、とても優しい人なのよ。

わたしのこと、いつも腕の中に入れて守ってくれたわ。


名前を呼ばれるだけでとても嬉しくて―――


わたし、その人のことが大好きだったの。




―――想うだけで心が痛くなる・・・


会いたくて、声を聞きたくてたまらなくなる。


・・・どうしようもないわね・・・。
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