シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
治療室の中では二人の医官が必死に重傷を負った兵士の治療をしていた。
その医官に話しかけるのは躊躇われたが、迷っている時間は無い。
「あの、すみません・・・時間はとりませんので、話を―――」
眼鏡をかけた医官は突然現れた一人のメイドを一瞥し、再び治療の手を動かし続ける。
「―――何ですか?」
忙しそうな医官の負担にならないよう、手短にまとめ、自分の考えを聞いてもらった。
「わかりました、あなたに任せます。外に居る助手を使うといいでしょう。あれでも少しは出来るから」
医官は手を止め、眼鏡をきらりと光らせて微笑むと再び治療に専念し始めた。
許可を貰ったエミリーは助手に協力してもらい、廊下を衝立で囲むと椅子と薬箱を置いて即席の治療場所を作った。
「あなたはここで手当てをお願いします」
そう言うと助手は何か言いたげに口をパクパクさせている。
「医官の方があなたにしてもらうようにと言っていました。よろしくお願いします。メイ、軽傷の方をこちらに回すからこの方の助手をお願いね」
そうして部屋に戻ると、適当な紙で簡単な問診票を作り、一人ずつ順番に問診を始めた。
「お名前は・・・・・?」
こうして問診を始めると、転倒したりした際の擦り傷や切り傷の程度の軽いものがほとんどだった。
これなら、助手にだって手当てができる。
「これを持って廊下で待っていてください。順番が来たらこの紙を渡して、手当てを受けて下さい」
紙には名前とどこがどう痛むのか、どうして怪我をしたかが書いてある。
問診を始めると自分が軽傷だということに気づき、自ら廊下に出ていく人も現れた。
その結果、ほとんどの人が廊下で手当てを受けていく。
部屋の中に残ったのは、骨折の疑いのある人と縫うほどに深い傷を負った数人の負傷者だけになった。
さっき部屋の真ん中で人並みに揉まれていた使用人もいる。
骨折の人には添え木をして応急処置をしておいた。
痛みを訴える人には患部を冷やしてもらっている。
一息ついて廊下の様子を確認すると、いつの間にかパトリックと兵士が来ていて、助手とともに手当てを始めていた。
――良かった、廊下の方は大丈夫ね・・・
「もうすぐ、診てもらえますからね。それまでがんばりましょう」
励ましながら骨折した部分を見ると、さっきよりも腫れがひどくなっていた。
顔を歪めて痛みに堪える使用人。
冷やしている布は、すぐに体温で温まってしまう。
少しでも痛みを和らげようと、冷やしている布を頻繁に交換した。
その医官に話しかけるのは躊躇われたが、迷っている時間は無い。
「あの、すみません・・・時間はとりませんので、話を―――」
眼鏡をかけた医官は突然現れた一人のメイドを一瞥し、再び治療の手を動かし続ける。
「―――何ですか?」
忙しそうな医官の負担にならないよう、手短にまとめ、自分の考えを聞いてもらった。
「わかりました、あなたに任せます。外に居る助手を使うといいでしょう。あれでも少しは出来るから」
医官は手を止め、眼鏡をきらりと光らせて微笑むと再び治療に専念し始めた。
許可を貰ったエミリーは助手に協力してもらい、廊下を衝立で囲むと椅子と薬箱を置いて即席の治療場所を作った。
「あなたはここで手当てをお願いします」
そう言うと助手は何か言いたげに口をパクパクさせている。
「医官の方があなたにしてもらうようにと言っていました。よろしくお願いします。メイ、軽傷の方をこちらに回すからこの方の助手をお願いね」
そうして部屋に戻ると、適当な紙で簡単な問診票を作り、一人ずつ順番に問診を始めた。
「お名前は・・・・・?」
こうして問診を始めると、転倒したりした際の擦り傷や切り傷の程度の軽いものがほとんどだった。
これなら、助手にだって手当てができる。
「これを持って廊下で待っていてください。順番が来たらこの紙を渡して、手当てを受けて下さい」
紙には名前とどこがどう痛むのか、どうして怪我をしたかが書いてある。
問診を始めると自分が軽傷だということに気づき、自ら廊下に出ていく人も現れた。
その結果、ほとんどの人が廊下で手当てを受けていく。
部屋の中に残ったのは、骨折の疑いのある人と縫うほどに深い傷を負った数人の負傷者だけになった。
さっき部屋の真ん中で人並みに揉まれていた使用人もいる。
骨折の人には添え木をして応急処置をしておいた。
痛みを訴える人には患部を冷やしてもらっている。
一息ついて廊下の様子を確認すると、いつの間にかパトリックと兵士が来ていて、助手とともに手当てを始めていた。
――良かった、廊下の方は大丈夫ね・・・
「もうすぐ、診てもらえますからね。それまでがんばりましょう」
励ましながら骨折した部分を見ると、さっきよりも腫れがひどくなっていた。
顔を歪めて痛みに堪える使用人。
冷やしている布は、すぐに体温で温まってしまう。
少しでも痛みを和らげようと、冷やしている布を頻繁に交換した。