シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「随分冷えているな」
政務塔の廊下を塔へ向かいながらボソッと呟くアラン。
腕の中で苦し気に呼吸する身体から感じられる体温は、驚くほど低い。
「ごめんなさい・・・」
自分の胸に頬を預け、さっきから謝罪の言葉を口にするエミリー。
先ほどから何度もうわごとのように繰り返しているが、一体何に謝っているのか。
私に謝る理由など一つも見当たらないというのに。
こうして部屋まで運ばれることに対してか?君が私に迷惑をかけているとでも言うのか。
それならば勘違いも良いところだ・・・私が、こうしたいと思っているのに。
考えたくもないことだが―――君はいつか誰かのものになってしまう。
その日が来るまで、こういうことは私にさせて欲しい。
この身体は決して、他の男には託したくないし指一本触れさせたくない。
こんなこと、迷惑だとも面倒だとも思わない。
この怪我の手当てなど、少々遅れたところで痛くも痒くもない。
きっと身体が弱っているせいで気も弱っているのだろう。
急ぎ部屋に行き、温かなベッドでゆっくり休ませたい。
だが、後から小走りでついてくるメイのことを考えると、これ以上早く歩くのは躊躇われる。
しかし、一体何をどうしたらこんなに身体が冷えるのか。
ウォルターからは”メイと一緒に部屋に居る”と聞いていたのに、何故あそこに居たのか。
疲労で倒れるほどに何をしたのか。
全く、困ったものだ・・・君の行動はいつも私の予想を越えている。
あの時もそうだったように、いつも予想外の場所に、居る。
初めて城に連れて来た日を思い出す。
君はあの時もこんな風に冷えていたな・・・。
この廊下の角を曲がれば、向こうに塔の入口が見えてくる。
ここまで来れば塔はもうすぐ、もう少しの辛抱だ。
外はいつの間にか雨があがり、二つの月が雲間から覗き始めた。
外は未だに風が強く、空に浮かぶ雲も流れが早い。
忙しそうに光と闇が交互に城に訪れる。
白亜の塔に月明かりが差し、暗かった入口を明るく照らし出した。
雨に濡れた白い壁が艶々と光る。
―――妙だな・・・塔の入口にいるはずのいつもの警備兵がいない。
兵士達は基本的に命令なく持ち場を離れることはない。
休憩ならば、交替で取っているはずだ。
何か持ち場を離れねばならぬ事態が、塔で起こったと考えるのが妥当か・・・。
だとすれば、塔から漂ってくるこの気配は・・・。
気の急くような・・・ひっそりとしながらも慌ただしいような―――
妙な気配―――
「メイ、この先塔の廊下を進む時、出来るだけ足音を立てないよう。それから部屋に着くまで声を出さないように・・出来るか?」
政務塔の廊下を塔へ向かいながらボソッと呟くアラン。
腕の中で苦し気に呼吸する身体から感じられる体温は、驚くほど低い。
「ごめんなさい・・・」
自分の胸に頬を預け、さっきから謝罪の言葉を口にするエミリー。
先ほどから何度もうわごとのように繰り返しているが、一体何に謝っているのか。
私に謝る理由など一つも見当たらないというのに。
こうして部屋まで運ばれることに対してか?君が私に迷惑をかけているとでも言うのか。
それならば勘違いも良いところだ・・・私が、こうしたいと思っているのに。
考えたくもないことだが―――君はいつか誰かのものになってしまう。
その日が来るまで、こういうことは私にさせて欲しい。
この身体は決して、他の男には託したくないし指一本触れさせたくない。
こんなこと、迷惑だとも面倒だとも思わない。
この怪我の手当てなど、少々遅れたところで痛くも痒くもない。
きっと身体が弱っているせいで気も弱っているのだろう。
急ぎ部屋に行き、温かなベッドでゆっくり休ませたい。
だが、後から小走りでついてくるメイのことを考えると、これ以上早く歩くのは躊躇われる。
しかし、一体何をどうしたらこんなに身体が冷えるのか。
ウォルターからは”メイと一緒に部屋に居る”と聞いていたのに、何故あそこに居たのか。
疲労で倒れるほどに何をしたのか。
全く、困ったものだ・・・君の行動はいつも私の予想を越えている。
あの時もそうだったように、いつも予想外の場所に、居る。
初めて城に連れて来た日を思い出す。
君はあの時もこんな風に冷えていたな・・・。
この廊下の角を曲がれば、向こうに塔の入口が見えてくる。
ここまで来れば塔はもうすぐ、もう少しの辛抱だ。
外はいつの間にか雨があがり、二つの月が雲間から覗き始めた。
外は未だに風が強く、空に浮かぶ雲も流れが早い。
忙しそうに光と闇が交互に城に訪れる。
白亜の塔に月明かりが差し、暗かった入口を明るく照らし出した。
雨に濡れた白い壁が艶々と光る。
―――妙だな・・・塔の入口にいるはずのいつもの警備兵がいない。
兵士達は基本的に命令なく持ち場を離れることはない。
休憩ならば、交替で取っているはずだ。
何か持ち場を離れねばならぬ事態が、塔で起こったと考えるのが妥当か・・・。
だとすれば、塔から漂ってくるこの気配は・・・。
気の急くような・・・ひっそりとしながらも慌ただしいような―――
妙な気配―――
「メイ、この先塔の廊下を進む時、出来るだけ足音を立てないよう。それから部屋に着くまで声を出さないように・・出来るか?」