悲恋マーメイド
その言葉に、

薬の
対価の重みを知る。

なんでも願いが
叶う薬。

西の魔法使いなら作成することは可能だろうそれは、

偉大な力と比例するほどの対価が求められるはずだった。

目の前で微笑みながら泣く女に

不安がよぎる。


対価。


対価は。


この薬の対価は、
まさか。



「待…っ!!」



男の制止を聞かず女は一気に薬を煽り、

飲み下した。


愕然とする男に
もう一度強く微笑んでみせる。


まるでそれが、

最後の微笑みだと
いうように。


記憶に刻んでほしいとでも

いうように。


しっかりと薬が自分に馴染むのを待ってから、

女は言った。










「あなたの心に
『愛』を」












それが女の言った

最後の言葉だった。
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