悲恋マーメイド
女はこの日の為に西の魔法使いのもとへ行き、この薬を依頼していた。

使う日がこなければいいと願った心も虚しくこうして手にしている事に悲しくなりながらも必死で笑顔を保ち続ける。


「何の薬だ」


朴訥に問うその姿を見つめながら、女は昔の男を思いだしていた。

こんな顔をする男ではなかった。

こんな声を出す男ではなかった。


あの頃の男に戻せるなら自分は

なんだってする。









たとえそれが

ーーー間違いでも。










「なんでも願いが
叶う薬よ」

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