赤い狼 四
――――――――
―――――
―――
「よっしゃ!稚春の迎えに行ってくるわ。」
「はいはい。いってら~。」
無駄に気合いを入れて立ち上がる連を見ながら片手を上げる。
「誰よりも早く稚春に逢えるなんて羨ましすぎるじゃねぇか。
って、おいおい。"崖から落ちて命は助かったが手足が複雑骨折、全身打撲"ってどーゆー事だよ。俺様はそんなんで傷なんか付かねぇっつーの。」
俺の後に言葉を溢した銀は、まだ人生ゲームのゴールを目指しながらルーレットをクルクルと回し、連を横目で見る。
…お前はまだやってたのか。つーか、さすがの銀も崖から落ちたら怪我すんだろ。
ってか、普通死ぬだろ。
と、そんな思いを込めながら銀を見ても
「何だよ奏ちゃん。そんなに俺がカッコぃぃのか?
見惚れるなよ。そんなに見たいんだったら一見(ひとみ)千円で取り引きしてやってもぃぃぜ?」
「銀の顔にそんな価値あるわけないだろ。」
結局、馬鹿でナルシストな銀には伝わらなかった。
つーか伝わる方がおかしかった。
期待した俺が馬鹿だった。