赤い狼 四
なのに何で今日はこんなに胸騒ぎがするんだ。
落ち着かない。
そわそわ、そわそわと。
俺の気持ちが落ち着いてくれない。
何かが、"いつもと違う"と俺に訴える。
でも、何が違うのか分からない。いや、分かりたくない。
分かってしまったらもう戻れない気がする。
服の上から左胸に手を当てる。
すると、ドキドキといつもより速く心臓が動いていた。
「…病院に行った方がぃぃのか?」
首を傾げて窓の外を見る。
そこで丁度、視界に入ってきた空を飛んでいくカラス。
翼をバサバサと羽ばたかせて忙しく飛ぶカラスを窓に近付いて目で追いかける。
カラスの艶やかな黒が稚春の真っ黒な髪の色と被った。
………早く稚春、来ないかな…。
最近、弄るのが楽しくて此所に来てるのに。
そんな事を思いながら。
ボーと空を見つめていた。
この後、何が起こるかなんて知らずに。