赤い狼 四
自分の長くなった手の爪を少しの間眺めて周りを見渡す。
ここは《SINE》のいつもの部屋。
でも、何故か今日は誰も居ない。
カチコチ、カチコチ。
時計の針が動く。
カチコチ、カチコチ。
音が広い空間に虚しく鳴り響く。
「寂しいなぁ…。」
ぽつりと本音を溢すけれどそれに対しての言葉は返ってこない。
「皆、何してるのかなぁ…。」
「…稚春?」
今度こそ消えそうな一人言を呟くと、後ろから聞き慣れた声がした。
「…あ。連だ。」
暫くの間動かしていなかった自分の体をゆっくりと声がした方に向けると、
そこにはドアを開けたまま固まっている連が目を見開いて私を見ていた。
「…っ。稚春、皆は?稚春居んのに皆居ねぇの?どうやって来たんだ?一人でずっと此所に居たのか!?」
「え、どうしたの?急に大きな声出して…。」
急に動き出してこっちに走って向かってきたかと思ったら
私の肩を掴んで質問責めしてくる連。