赤い狼 四
それでも答えようとしない私に、ゆっくりと連が私との距離を縮めてくる。
まぁ、答えようとしない、ではなくて正確には答えられない、というのが正しいんだと思う。
だってこんなにも連が…
「…っ!?」
下に向けていた顔を思いきって上に向けると、連の顔が想像していたよりアップで映って慌てて体を連から遠ざけた。
ち、近い!
ほとんど半年、《SINE》に出入りして経つし男の中で過ごしてきたけど、男の人とこんなに近くに居た事なんてほとんどない。
あったとしてもそれは、相手から一方的に強引に迫られたりとかしてたから意識する暇なんてなかったし
祐お兄ちゃんはお兄ちゃんだから私の中では別だし…!
と、とにかく男に免疫があまりない私にはこの距離はキツすぎる!
塚、心臓に悪い!
「ちょ、ちょっと連…」
このままだと心臓が壊れる危険性を感じた私は連から遠ざかろうとして連の胸板を押す。
すると、それが連の機嫌を損ねたのか何なのか分からないけど
連は眉間に今までなかった皺を作って私を見た。