赤い狼 四
「何で?」
正直、そう言うだろうと予想がついていた私は素早くそう言い返した。
理由はもう大体、分かっている。銀の指がトントン、と床をリズムよく叩いていた時点で、分かっている。
でも聞きたい。聞きたいのだ。憶測ではない、《SINE》の人からの答えを。
「じゃあ言わせてもらうけど、何で稚春は隼人のところに行きたいの?」
棗が側にあったソファーにふぅ、と息を吐きながら座る。
その動作を目で追いながら
「今日ここに私一人を置いてきぼりにさせた文句を言うのと、私が隼人の彼女だから。」
とごもっともな意見をぶつける。
すると棗は、そうくるか…。と小さく呟いて私に視線だけを向けた。
「稚春、今は忙しいんだ。いずれ知る時が来る。」
「私、《SINE》の一員なのに?」
んしょ、と言いながらソファーから立ち上がった棗にまた素早く言い返す。
女絡みだから言えないの?
皆の親しかった人の事だから私には内緒なの?
私も《SINE》の一員で、隼人の彼女なのに知っちゃいけないの?
皆は知ってるのに、私には秘密なの?
ねぇ、それって私、除け者扱いじゃん。仲間はずれじゃん。
私、何の為にここに居るの?