赤い狼 四
「何を勘ぐってんだ?本当に隼人のところに行くだけだぞ?」
銀が私の顔をまじまじと見つめる。
そこで私は見つめられて恥ずかしくなったフリをして俯き、銀の手元を三人に気付かれないように横目でチラリと見た。
……やっぱり。
予想していた通りでため息を溢す。
そして、棗に目を向けた。
「ねぇ、じゃあ私も連れていってよ。」
えっ、と後ろに居る連が言葉を漏らしたと同時に銀が目を見開くのが分かった。
でも、私はそれに反応せずにただ一点だけを見つめる。
棗の、瞳だけを。
ジッと棗が目を細めて私を見つめてくる。私も負けじと棗の目を見つめた。
そして――何分たっただろうか。
いや、たぶん十秒くらいしか見つめ合ってなかった。時間が長く感じただけだろうけど、とにかく、長く感じた。
私達二人が無言で見つめ合っている途中は誰も喋らなくて。でもふと、棗が細めた目を元に戻した。
と同時に、その綺麗な赤い唇を静かにゆっくりと動かして。
「駄目だよ。」
にっこりといつもの爽やかな表情でそう、言った。