赤い狼 四
「あれからもう二年か…。」
紫煙を肺いっぱいに吸い込んで煙草の味を味わう。
うーん。
絶妙な旨さだな、これは。
最初に煙草を開発した人を褒め称えてやりてぇ。
盛大な拍手を贈ってやるのに、と目を細めながら自分の手の中にある煙草を見る。
「あの日以来…。」
すると、奏が風が吹いたら消えそうな声を出した。
「血が駄目になったんだ。誠也を思い出しちゃうんだよ。」
床にしゃがみこんで吸い殻を擦り付ける奏が泣きそうな表情を見せる。
「馬鹿じゃねぇの、って思うかもしれねぇけど本当に駄目になったんだ。」
「馬鹿じゃねぇよ。」
奏の髪をクシャクシャと掻き乱しながら、馬鹿じゃねぇ、ともう一度言う。
なーに弱気になってんだ。
「目の前で見たら誰だってそうなる。俺は駄目になっちゃあいねぇけど。
やっぱり、血を見ると思い出す。あの日と、誠也の事を。だからよ、奏はおかしくねぇよ。」
そうか、と奏が一言呟いて立ち上がる。
「いつまで俺の頭掴んでんだ。」
「いきなり本調子かよ。」
パシッと払われた自分の手を擦る。
少しは感謝っつー態度を見せたらどうなんだ。