赤い狼 四





なんて薄情な私。




自分さえ良ければいいなんてそんな考え、私が一番嫌っていた考えなはずなのにそれを今、しようとしている。




しようとしては止めて、しようとしては止めてを繰り返す。




しょせん私はそういう、人間なのだ。





鞄のチャックを真ん中で閉める。




ジィイイィという音を耳に入れる私の両隣では実と香が今日の合コンについて語っている。




私を巻き込まないでくれたら嬉しいな。なんて思いながら微かに口に笑みを浮かべた。




毎年、冬休みに入ると合コン三昧な日々を送る実と香の真剣さが私を挟んで行われている会話から読み取れて笑える。




毎年、というか年がら年中合コン三昧なのに二人には彼氏ができない。




この高校生活で一度も彼氏ができた事がないのもある意味才能じゃあないかな、と最近は思う。




だって高校一年の頃から合コンしたり逆ナンしたりしているのに彼氏ができないって…。



もう諦めなさい、というお告げなのかもね。






と、苦笑いを顔に張り付けながら実と香の話を聞いていると――――――「白兎稚春、さん。」後ろから私の名前を呼ぶ女の人の声が耳に届いてきた。






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