赤い狼 四
その声に反射的に振り返って、すぐに後悔した。
「……何?」
目をすがめて後ろに立っている人を見る。
私の無愛想な声を聞いて、その女の子はクスリと音をたてて笑う。
くすりくすり。
完全にクラスメイトが居なくなった静かな教室にその声が響く。
いつの間にか実と香は話を止めていたみたいだ。私の後ろでひそひそと何かを話しているのが聞こえる。
それが何の話なのか気になるけれど―――今はそれに気を止めているわけにはいかない。
微かに後ろに向けていた意識も完全に目の前の女の子に向けた。
「そんな怖い声と顔で威嚇してこないでよ。」
笑い終わった女の子が私ににこりと笑いかける。
それに、舌打ちをしてやりたい気分になった。
「それで、何の用?」
丁度いい高さの机に軽く座って、そう話しかける。
すると、その長い髪の持ち主は「気が早いのね。」綺麗な金の色を手で払って靡かせた。
廊下の窓から差し掛かるオレンジ色がその金色に混ざり込む。