赤い狼 四
"妃菜"。
確かに本城エリはそう言った。
妃菜ってあの"妃菜ちゃん"?
どくどく。
頭を忙しく働かせている私に激しい心臓の音が響く。
「えぇ、そうね。私もそう思うわ。エリ。」
"妃菜ちゃん"の声が耳に入ってくる。
この声だ。間違いない。あの時、電話で聞いたものと同じ声。
どくどく。どくどく。
心臓の音が私の体中に響き渡ってきて気持ち悪い。
どくどくどくどくどくどくどくどく――――…「初めましてよね?」
煩かった音が少し高い音によって消えた。
―――あぁ、間違いない。
"妃菜ちゃん"だ。
うっすらと目を細めて廊下から入ってきた女の人を見つめる。
綺麗なブラウンの長い髪の毛に、くりくりとした大きな目。
透き通るような肌に、どこも細い体型は女の憧れそのもの。
だからなのか、ふわふわのファーがついている白のコートがとても似合う。
私が想像していた"妃菜ちゃん"そのもの。