赤い狼 四






"妃菜"。



確かに本城エリはそう言った。




妃菜ってあの"妃菜ちゃん"?






どくどく。



頭を忙しく働かせている私に激しい心臓の音が響く。





「えぇ、そうね。私もそう思うわ。エリ。」




"妃菜ちゃん"の声が耳に入ってくる。



この声だ。間違いない。あの時、電話で聞いたものと同じ声。





どくどく。どくどく。





心臓の音が私の体中に響き渡ってきて気持ち悪い。




どくどくどくどくどくどくどくどく――――…「初めましてよね?」





煩かった音が少し高い音によって消えた。





―――あぁ、間違いない。




"妃菜ちゃん"だ。





うっすらと目を細めて廊下から入ってきた女の人を見つめる。




綺麗なブラウンの長い髪の毛に、くりくりとした大きな目。



透き通るような肌に、どこも細い体型は女の憧れそのもの。



だからなのか、ふわふわのファーがついている白のコートがとても似合う。





私が想像していた"妃菜ちゃん"そのもの。





< 325 / 457 >

この作品をシェア

pagetop