赤い狼 四
「こっちはあなたに構っていられるほど暇じゃないの。」
「…会いに来たっていうのに冷たいのねー。」
相変わらず冷たい声を出す私に、金髪の持ち主は髪から手を離して呆れたような顔をする。
今、目の前に居るのは本城 エリ。妃菜ちゃんの唯一の友達だ。
この人が私に逢いにきたって事は何か用事があってきたんだろう。いい事、ではないのは確かだけど。
「で、何なの?用がないなら帰ってくれる?」
「用事ならあるわよ。だから来たんじゃない。無かったらわざわざ会いたくない人に会いになんてこないわ。」
「そう、じゃあ何の用なのよ?」
「そんなに急かしていいの?あなたが嫌な思いをするだけなのに。」
「は……?」
何を言ってるんだ、と右の眉を少しだけ上げている本城エリにそう言おうと思った瞬間―――――コツン。
嫌な予感がした。
「いつか逢うことになるんだから今逢っても別に変わらないでしょ?ねぇ、そう思うわよね?――――――妃菜。」
心が大きく、揺れた。