赤い狼 四
「銀って相変わらず変態スケベエロおじさんなんだね。」
「名前長ぇよ~。」
「ツッコむ所そこ?」
ヘラヘラ笑って私の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱しながら頭を撫でる銀に奏があからさまなため息をついた。
「まぁ細けぇ事は気にすんなよ。水色奏の野郎よ~。」
「…髪の色を付け加えんな。しかも野郎付けんな。」
「あらら。反抗期かよ~。困ったもんだ。」
反抗期らしい奏と相変わらず適当な銀を見て変わってないなと懐かしく思う。
最近逢ってないからかそんな事を思っている自分に心底驚いた。
皆と毎日逢えなくても寂しくないと思っていた私だったけど案外、そうでもなかったらしい。
逢えない内に変わってしまって私なんか要らなくなっちゃうんじゃないかと一瞬でも思っていた自分に少し呆れた。
こんなんじゃ自分がこの街を離れる時が心配だ。
この街を離れたら私は家と私の意地のために司と結婚して、《SINE》や《VENUS》の事を忘れて過ごす。
なのに少し逢わなかっただけでこんなにも寂しい気持ちになるんだからこの街を離れた時、悲しみや寂しさを耐えられる事なんて無理だ。