赤い狼 四
「よし、じゃあコイツ等は放っておいて行こうか。」
「え。何処に?」
考え事で半分意識を飛ばしていた私の手を棗にそっと握られてハッと意識を取り戻す。
戸惑った私の質問に、棗はにっこりと笑った。
「隼人の所に。」
その言葉に、胸がドクンと波打った。
「えっと、隼人の所?」
「うん。そうだけど?」
「隼人ってあの?」
「え。他にどの隼人がいるの?」
「あ、えと…うん。そうだよね…。うん、何言ってるんだろう私。隼人は隼人だよねっ!」
あはは、と笑顔を作って棗に向ける。
そんな私を見て棗は「変な稚春。」と軽く笑った。
それを見て酷く安心して。
何故か涙が溢れそうになったのを誤魔化すようにして目を擦って話題を変えた。
「ねね、そういえば連は?」
「あぁ、連なら――」
「稚っ春ー!」
「あ、連っ!」
ぴょこんぴょこんと跳ねるように前から走ってくる連に大きく手を振る。
すると、さっきよりももっと早いスピードでこっちに向かって走ってきた。
いやいや待て待て。私このままじゃ突撃される。