赤い狼 四





"妃菜ちゃん探し"をスルーされるとは思ってなかったみたいで素っ頓狂な声を出した雷太が私を食い入るように見つめてくる。



そんなに見つめたら穴があくよ。なんて思ったけど口にはしない。私だってシリアスな雰囲気だってことは分かる。





「稚春さんは嫌じゃないんスか?」



「"妃菜ちゃん探し"は正直どうでもいい。私は隼人の仮の彼女だし。好き同士で付き合ってるんじゃないからそんな顔しないでよ。」



「俺、今どんな顔してます?」



「……苦しそうな、泣きそうな顔。雷太は優しいね。」





私の気持ちを分かってくれて。



心の中でそう呟いて微笑む。その瞬間、雷太が歪んでいた顔をもっと歪ませた。

…雷太は優しすぎるね。





「ねぇ、昔の隼人はどんな感じだった?優しかった?笑ってた?それとも眉間に皺を目一杯寄せてた?妃菜ちゃんと別れた後、ちゃんと泣いてた?………ねぇ、どうだった?」




妃菜ちゃんの名前をどんな声で呼んでた?


私にするようにいきなりキスしたりとかしてた?


あのいつも余裕な隼人が嫉妬したりとかしてた?




聞きたいことがいっぱいある。




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