恋愛カクテル
想定外の提案に思考が一瞬完全に白くなる。

いや、白くなってる場合じゃないぞ私!

また意味不明な汗をかきながら、私は丁寧なお断りの台詞を考える。

なんか今日、汗かいてばっかりだ。

私は必死で頭を使い………、


うまく言い負かされて、休業日に店に行くことになってしまった。


『シェークの扱いは、指導者がいたほうが絶対いいですよ』


こう言われては、言い返しようがない。

営業中ではないので、照明はやや明るめだ。
採光が違うだけで、見知った店内も少し雰囲気が変わって見える。

音楽をかけてくれているのは、気配りだろう。

説明を聞き、カクテルには材料と用具と腕以外に、温度が重要と知ってシェークを握る自分の手を見つめる。

基本的に冷え性の私は例外なく今も手が冷たい。

もしや私はバーテンダーに向いているのではなかろうかと、ひそかにテンションが上がっていると、目の前にカクテルを置かれた。


「?」


不思議に思っていると、ツと近づけられる。


「どうぞ。俺のオリジナルなんです」


私がオリジナルカクテル云々と言っていたのを覚えていてくれたのだろう。

かなり得した気分になり、お礼を言って遠慮なくいただく。

甘酸っぱい、優しい、でも切れのある口当たりで美味しい。

でも、うまく言えないけれど、まだ安定していないような、迷いみたいなものが後味に残る。

やっぱり、オリジナルにはそういう若々しさみたいな味が、定番にはそういうどっしり構えた味が身につくものなのかもしれない。


「このカクテル名前はなんていうんですか?」


尋ねると、得たりという顔で微笑まれた。



「『俺を好きになってください』」





………………は?
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