死せる朝日の会
「おいおい、冗談言ってないで帰ろうぜ、もう気は済んだだろ。」
と声を掛けた。
だがその時、背中に何か寒気のような物を感じた。 ゆっくり周囲を見渡す、そこには何も見えない。 けど、何かいる、見られている。 誰に? 妙はまだ一人で地面を見ていた。 他に人影は無い、だが、確実に誰かの視線を感じる。 感じるんだけど…
「もう いいよ。 用事は済んだ。」
突然肩を叩かれた俺は、びっくりして、その場に転倒してしまった。そこには、いつもと変わらぬ妙の姿があった。
「あれ? そんなにびっくりしなくてもいいのに。 …って、用事って何だっけ? 」
俺は何も言えずに、ただ黙って妙を見ていた。 どうしたんだ? 明らかにさっきまでとは様子が違っている。 今、目の前にいるのは、紛れもなく妙だ。俺の親友で、大事な女の子。 けど、何だこの感覚は? ついさっきまでの妙は、少し普通じゃなかった。 だけど、何故だろう、それこそが本当の妙な気がする。俺は、昨日までの妙に違和感を感じていたのだ。
「妙、あのさ、結局ここには何しに来たんだ?」
既にさっきまでの視線は無く、静まり返った寺院は、異常なまでの雰囲気で俺を威嚇しているようだった。
< 13 / 258 >

この作品をシェア

pagetop