死せる朝日の会
まるで、俺一人が敵陣に放り込まれたような錯覚すら覚える。 さしずめ妙は、敵の総大将とでも言った感じだ。
「目的? さあ、何だったかな。もう、忘れちゃったよ。」両手を広げ、笑いながら言う妙は、何か楽しげに見えた。いや、楽しそうに見えたのは俺の見間違いだった。後になって思えば、この時の妙は焦っていたのだろう、ただ、俺がその事に気が付く事はなかった。何故なら、この後起きた出来事に、俺は意識を取られてしまったからだ。 妙は笑顔のまま俺に近づいて来て、俺の胸ぐらを掴み一気に引き寄せた。そしてそのまま、躊躇すること無く俺の口にキスをしたのだ。「…!? 何を…」 言葉にならない、驚いて何も言えない俺に妙は、
「わかった? 私の目的、そしてあんたの目的。」
今、いきなりキスをした相手に対し、少しも動揺してない彼女は、そのままゆっくりと歩きはじめた。情けない事に、その帰り道、俺は妙の顔をまともに見る事ができずに、ずっと下を向いてしまっていた。
「じゃあ、また明日学校で。」
そう言って手を降る妙に、手を振り返すのが精一杯だった。 俺の頭の中では、昼間に見た映画で見た台詞が、ぐるぐる回っていた。
「夜明けを、最後の私達に」
と。
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