死せる朝日の会
「うむ、やはり良い腕だ。頭部の腫れもひいている。礼をいうぞ。なるほどな、これなら小僧の左手も簡単に治せるだろうな。」
パステルは自分の左手をじっくりと見ながら、しきりに感動していた。
「いえいえ、あれは簡単ではありませんよ、なにせ久しぶりに薬を使いましたからね。あれほどの怪我を見るのはまれですね。」
と、ルーベンスは俺に笑いかける。 そんなにひどかったのか? 俺は自分の腕を見ながら苦笑いを浮かべる。
「さて、そろそろ行くか? ヒナは倉庫に言って358番の箱を持って来い。」
パステルは少し楽しそうに言った。しかし、ヒナって何だ?誰も何も言わない、
「どうした? 時間が無いのだろう?」
どうやら俺に言ってるらしい、
「あの、パステル、彼は記憶が戻ってないのよ、だからヒナって言った部分が聞こえてないのよ」
ユリスがパステルに告げる、やはり俺に言ってるな。だとしたら、
「いや、聞こえたぞ。“ヒナ”ってな。それってまさか俺の事なのか?」
ユリスはびっくりした顔で俺を見た。
「思い出したの?」
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