死せる朝日の会
リンダは俺の側で膝をつき、俺を抱きしめた。 胸元に顔をうずめた俺は、リンダに愛された幸せを感じていた。
「俺もだ、愛してるよリンダ。」
気がつくと、リンダも泣いている。
俺達はしばらく、涙も拭わずに大声で泣き続ける、それが今できる精一杯だと思った。
どれくらい時間が過ぎただろうか、俺達は礼拝堂の壁にもたれるように座りながら話していた。
「なあヒナ、やっぱりまだ記憶は戻ってないのか?」
既に泣き止んではいるが、まだ少し目元が腫れたままのリンダが俺に聞いた。
「ああ、全く思い出していない。 自分の名前にすら違和感を感じるよ。」
実際その通りだ、俺の認識では未だに俺は高柳周一なのだ。
「そうか、だとしたら今のお前はまだヒナじゃないのかもしれないな? 私は昔からヒナが好きだけど、今のお前に対する気持ちは少し違う気がするんだ。」
「どうして? 俺の記憶がないからか?」
やっぱり記憶が無いと駄目なのかな?
「う~ん、なんて言うか、今の私が好きなのは今のお前なんだよな。だからさ、もしかしたら私は高柳周一が好きなのかも? とか思ったりしたんだよ、まあ判別はできないんだけどな。」
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