死せる朝日の会

俺じゃない

俺の家に突如現れたそいつは、ソファーに深々と腰掛け、おそらく自分で煎れたであろう紅茶を飲みながら俺を見ていた。
「やはり無理があったようですね。 こうなってしまっては私の力も無意味ですし、これ以上は時間の無駄かと。」
俺には、こいつが何を言っているのかわからない。ただ、なんとも言えない奇妙な違和感を感じていた。この感じは、つい最近、妙と夜に行った寺院で、妙から感じたそれによく似ていた。
「とりあえずお座り下さい。状況を説明しましょう。もう喋っても大丈夫だと思いますし。」
そう言って席を立つと、俺に座るように促した。これが、もしゲームかなにかのイベントなら、話を聞いて情報を得るのが先だが。今は妙の事が優先だ、こいつに構っている時間は無い。
「悪いが、遊んでる場合じゃないんだ。部屋を出ろ。」
ドアを開いて男を見る。
「あなたはいつもそうだ、簡単にセオリーを無視する。」
特に逆らうでも無く外に出た。
「とりあえず話なら今度聞いてやるよ、今日は忙しい。」
ドアに鍵を掛けてから振り返ると、そこにはすでに男の姿はなかった。多少は驚いたが、今は気にしていられない。 俺はその場を後にした。
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