死せる朝日の会
それでも何故自分が泣くのかはわからなかった。 それに、同じくらいにショックなのは、確かに俺は、俺が誰だかわからなかったのだ。
「俺の名前は…」
思わず口に出してみたが、続けるべき名前が出て来なかった。 すぐに、ハッとなった俺は、財布から学生証を取り出す、これになら名前が書いてあるはずだからだ。心を落ち着かせて、ゆっくりと文字を辿る、そこには【高柳周一】と書かれていた。しかし、それを自分の名前だと認識する事はできなかった、それどころか、妙の名前にさえ違和感を感じていたのだ。
いろいろなショックもさることながら、事件というのは立て続けに起こるもの。とりあえず落ち着いて考えようと、部屋に戻った俺は、突然現れた人影に驚いた。
「これまで、様々な失敗を見てきましたが。今回のあなたの場合は、特にひどいですね」
そこにはソファーに腰掛けた、一人の若い男の姿があった。
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