貴方の愛に捕らわれて
彼女はいつも同じ時間に現れた。
最初のうちは、少し俺のことを警戒しているようで、まとう雰囲気が堅かった。
だが、次第に俺の存在に慣れたようで、彼女の雰囲気や歌声は、徐々に柔らかなものとなった。
10月も終わりとなるある寒い晩
『クシュン…』
彼女が小さなくしゃみをした。
見れば少し震えているようだった。
「寒いのか?」
気がつけば俺は声を掛けていた。
つい声を掛けてしまったが、彼女は俺を怖がる風もなく、ぼんやりと見つめられた。
俺は着ていたコートを脱ぎ、そっと彼女に羽織らせた。
『ぁ、あの……ごめんなさい………』
すると彼女はハッと我に返り、目を見開いた。
そして、頬を真っ赤染め、か細い声で謝った。
彼女は俺が寒いだろうと気遣いながら、また小さなくしゃみをした。
小さな彼女に俺のコートは大き過ぎた。
ブカブカな俺コートにくるまり、頬を真っ赤に染めて慌てふためく彼女。
その仕草が可愛くて思わず小さな笑いがもれた。
遠慮する彼女。
その必要はないと、コートの上から彼女にそっと触れれば、彼女はピクリと飛び上がった。
「ッ…。すまん。怖いか?」