貴方の愛に捕らわれて
 

『な、んでも、ありません。…ちょっと立ち眩みがして。

でも、もう大丈夫ですから』



怪訝な顔で注意深くこちらを伺う視線に、耐えられず下を向く。



この場を何とか切り抜けなければと、かすれた声で『本当に大丈夫です』と絞り出すと、逃げるように自室に戻った。



その背中を、佐武さんが鋭い瞳で睨んでいたのにも気づかずに。





「………おり…香織ってば。ねぇ、聞いてる!?」



ヒラヒラと目前で振られる手のひら。



『ご、ごめんなさい。ちょっとぼうっとしてた』



いつの間にか、思考の海に沈んでいたようだ。



呼ばれる声に意識を浮上させれば、目の前にはむくれた様子の由香里。



また悪い癖が出ていたようだ。どうも私は人と話しをしていても、自分の考えに気を取られると、相手のことを忘れて自分の中にこもってしまう。



それは恐らく、小さな頃からあまり他人と関わってこなかった所為だろう。



 

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