貴方の愛に捕らわれて
「こんにちは、香織さん。
こんな所で立ち話もなんですから、ゆっくり落ち着ける場所に移りませんか?」
気持ちを伝えようと決心した私に、突然誰かが話し掛けてきた。
声を掛けて来たのは龍二さんだった。
あの晩の龍二さんの言葉が、冷たい視線が蘇る。
『…ハァ…ごめ…な…さ……。ハァ……』
恐怖で震える身体。
上手く呼吸が出来ない私の両腕を、猛さんが強くつかんだ。
「香織、大丈夫だ」
猛さんは屈んで私に視線を合わせ、目を見てゆっくり「大丈夫」と繰り返す。
猛さんの力強い瞳に見つめらると、不思議と大丈夫な気がしてきた。
猛さんの腕の中で落ち着きを取り戻した私に、突然、龍二さんは大きな声で誤った。
「先日は大変失礼なことを致し、申し訳ありませんでした」