貴方の愛に捕らわれて
スーツケースは、逃げようとして身を捩っていた私の腰に命中し、バランスを崩した体はそのまま二階の踊り場から空中に投げ出された。
まるでドラマのワンシーンを見ているかのように、自分の右手が空をかく。
次に天井の豪華なシャンデリアが、キラキラと輝いているのを視界にとらえた次の瞬間、背中から階段に叩きつけられ、強烈な痛みに襲われながら、階段をゴロゴロと転がり落ちてた。
体中あちこちぶつけて、息も止まりそうなほどの痛みで遠のく意識の中、野太い声が「姐さん」と呼ぶのをうっすらと聞きながら、私は意識を手放した。
派手に階段を転がり落ちた私が意識を取り戻したのは、病院のベッドの上だった。
「……さん、郷田さん。郷田香織さん。分かりますか」
何度か名前を呼び掛ける声に、重たい瞼を開けば真っ白な天井と二本ならんだ蛍光灯が目に飛び込んできた。