貴方の愛に捕らわれて
私にも中学三年の娘がいるから、貴女のことが他人事におもえないの。
そう心配そうに眉根を下げる佐々木さんに、嘘なんてついていないし、今朝だって具合が悪くて別の病院で見て貰ったばかりだから、疑うならその病院に確かめて。そう言って病室の名前を教えたらやっと納得したみたい。
佐々木さんは、プライベート携帯の番号だから、何か困った事があったら必ず力になるから相談してねと言って、名刺の裏に11桁の番号を書くと、私の手に握らせ病室を出て行った。
静かになった病室。ポツンとひとりになって、漸く全身から力が抜けてほっと息をつく。
手の中にある紙片を無造作に捨てて、ぐるりと室内を見渡せば、カーテンの隙間から覗く窓は真っ暗。私どれぐらい眠ってたんだろう。
結構な広さのある病室には時計が見当たらない。返してもらった携帯で時刻を確認すれば、20時を少しまわっていた。
家に帰ったのは5時頃だった筈だから、意識がなかったといってもそう長い時間じゃないみたい。