◇白黒恋争物語◆~運命の翼~
「誰が臆病ですか?誰が棗のこと嫌いって言いましたか?」
私はその声に目を丸くした。
「領・・・汰・・・」
「ふ~ん。棗ちゃんの言うとおり、領汰きたね」
川村先輩がゆっくりと私の上から降りた。
「結構早かったな~。俺見つけんの難しくなかった?」
「フ・・。全然ですよ。俺も頭使って動いてますから」
「・・そっか。じゃあ俺が棗ちゃんのこと好きなのも知ってたってことかな・・?」
「当たり前じゃないですか。先輩と俺、結構付き合い長いんですから。先輩の作戦なんかお見通しですよ。・・・まぁちょっとてこずりましたけど。相手が棗だとてこずるんですよ」
「棗ちゃんのこと好きだからなのか?」
「・・・さっきも言ったでしょう。俺は棗のこと嫌いじゃないって」
「だからつまり・・」
と川村先輩が言いかけたところで
「大嫌いだからでしょ・・・?」
と私は言い、やっとの力で男達の間から領汰を見た。
「あたり」
「相変わらず、喧嘩するほど仲がいいんだね~。めざわりなほど!!」
いきなり川村先輩のパンチが飛んできた。
それを見切ったかの用にさらりと領汰は交わした。
「先輩。先輩が得意なのは格闘技じゃないでしょう?足のほうじゃないんですか?」
「なめないでよ。俺これでもボクシング習ってるんだよね!!」
また不意打ちのパンチが飛んでくる。
領汰の顔ギリギリのところで川村先輩の手が止まった。
「・・・・うぅ・・・ッ・・っく・・・!」
川村先輩が苦しそうにしながらしゃがみこんでしまった。
「・・俺もなめてもらっちゃ~困ります。俺はボクシングは得意じゃないですが、喧嘩は得意ですよ。昔から」
領汰は目に見えぬ早さで川村先輩のお腹にパンチが入れていた。
「お世話になりました」
領汰はそう言うと私の周りを取り囲む男達を殴り倒し私を優しく抱いていた。
「先輩。猫かぶるならもう少し上手に被ってもらいたいものですよ」
そう捨て台詞を吐き部屋から出て行く。
「・・・領汰のやろう。やるじゃん。白黒家にはもう少し注意したほうがよさそうだな」
「白黒ではなく白黒家ですか?」
男の1人が切れた口を押さえながら川村先輩の言葉に疑問をいだいた。
「あぁ。因縁のな」
その言葉に深く考え込む男達をよそに川村先輩はイスに倒れこんだ・・・。
「第1弾、作戦失敗」
そう言って目を閉じた・・。