◇白黒恋争物語◆~運命の翼~
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トットットット....
私から見えるのは整いすぎた領汰の顔。
いつもにはない逞しさをまとって、ただ前を見ながら私を抱いていた。
「領汰。お姫様だっこはどぉなの・・」
「あ?不服か。こんなこと誰にもやってもらえないだろ?お前変な男からしかモテないしな」
「・・余計な・・・・・・お世話・・・。・・・・でも、今日はありがとう」
今なら素直に言える。
「・・・だから、それじゃあお前らしくないんだって。俺の調子が」
「逆!」
「え?」
「逆だよ。領汰の調子わざと狂わしてんの」
「なんで?」
「面白いから」
「それだけかよ」
「それだけだよ」
「・・・やっぱ可愛くねぇ」
「可愛くなくていいです~。これが私だからね」
「だな」
「ふふ・・・」
私は領汰の胸に顔をうずめ溜まっていた涙をこらえた。
気づかないうちに涙は一滴たれていた。
安心の涙が零れ落ちた・・・。
「・・・じゃあ俺もらしくねぇこと言う」
「・・何?」
「・・・・ごめんな。さっき。泣かせたりして」
「・・なかなかのらしくない言葉だね~」
「だろ?・・まぁ、今も泣かせてるけど」
「・・・・そうだよ。2回も泣かせるなんて・・・酷すぎる」
「まぁ。存分に泣けよ。今日だけは俺の制服ハンカチ代わりにしてやってもいいから」
その言葉で私の緊張は完全にほぐれた。
私を縛り付けていた青い紐がするりと落ちる感覚を覚えた。
「・・じゃあ・・・遠慮・・・・な・・く・・ッ・・。・・・・あぁぁっぁぁ!!!うぁぁぁあああ・・・!!うう・・っく!!あああああぁぁ!!」
俺はゆっくりと階段に腰をおろした。
俺の制服をがっしりと掴み大泣きする棗。
「朝とは大違いだな・・」
ぼそっと言ったその言葉は棗の鳴き声によってすぅっと消えた。
気づいた頃には
俺は棗の額にキスを1つ
落としていた。