◇白黒恋争物語◆~運命の翼~




「棗ちゃん。棗ちゃんに覚えてて欲しいことがあるんだ」



幼い私は目線をおじぃちゃんへと移す。




「なぁに?」





少し時が流れ、そして話始めた。







「・・・ばぁさんはね、体が凄く弱かったんだ。若い頃から病気になりがちでね・・。そのたびにおじぃちゃんはばぁさんの手を取り『大丈夫だ。大丈夫だ。・・大丈夫だからゆっくり休みな』と言ったんだ」




「・・・」




「30代でガンになったばぁさんは苦しそうでしょうがなかった・・。結婚してばぁさんの近くにいられる分、じぃさんも苦しかった・・。でもね、ガンにかかってから1年でばぁさんの体の中からガンが消えたんだよ。何もなかったかのような体で退院したばぁさんが少し心配だったんだ・・」




「・・うん」





「それから30年。特に重い病気にもかからず過ごしていた。・・・・だが60代最後の歳。30年前のガンが再発したんだ。お医者さんも驚いててね、30年もの間、そのガンはばぁさんの体にいながらなんで何も起こらず身を潜めてたんだって・・。悔しくてしょうがなかった・・。ここまで楽しく明るく幸せだったのに・・どうしてここで再発なんだ・・ってね」









・・・私はおじぃちゃんの目から少しずつ涙が湧き上がるのを見た。





おじぃちゃんの鼻が赤く染まっていく・・。





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