彼の瞳に捕まりました!
「もしもし」
誰からの電話か確かめもせずに慌てて通話ボタンを押した。
隣に座る高瀬がこちらを少し見ては前を見つめたのが横目に見える。
『今大丈夫?』
聞こえてきた声は、先程メールを送った浅川社長。
その声に何故かため息をつきたくなるのをグッと堪えて返事をした。
「大丈夫です」
『今晩、空いてるかな?』
「今晩……ですか?」
『遅くなっても構わない。会いたいんだ、菜穂に』
社長の声が脳内で響く、隣に座る高瀬に聞かれていないか気になって仕方ない。
「あ、の……」
『クラウンホテルの最上階のバーで待ってる。来るまで待ってる』
社長はそれだけ言うと電話を切った。
出て来るのはさっきグッと飲み込んだため息。
そんな私に高瀬は真っすぐ前を見つめたまま、言葉を発した。
「今のナホは、世界中のどんな奴より最低だね」
「……そ、そんな事」
「キスされたから好きになっちゃったんだ?」
「え?」
こちらを見ずに話す高瀬を思わず凝視した。
あの日、社長にキスされた事、どうして高瀬は知っているのだろう?
疑問が膨れ上がるけれど、それよりも高瀬の言葉に胸がざわめいた。