彼の瞳に捕まりました!
「キスくらいじゃ好きになんてならない」
自分でも驚くくらい低い声がでた。
やけに心臓がドキドキとうるさい。
心と頭が落ち着かなくて、今にも大声をあげてしまいそうだった。
「関係ないじゃない……」
「菜穂」
「私が誰とキスしたって、誰を好きになったとしても……」
「……」
「高瀬には、関係ないよ」
そうだ、関係ないんだ。
今までだって関係なかったんだ。
高瀬は私の言葉に返事をする事はなかった。
―――――
………
二人無言のまま社に戻り、先に車を降りた私は高瀬を振り返る事もせずに編集部へと急いだ。
あのまま二人きりでいられなかったから。
自分のデスクにつくと、今日の撮影のデータをまとめ、DTP編集さんとの打ち合わせをしに行った。
高瀬と部屋を出る時にすれ違ったけど、視線を合わせる事が出来なかった。
高瀬に言われた言葉が胸に残る。
最低だね。
そう言った高瀬、けど彼も最低だと思う。
誰とでもキスをする。
誰とでもセックスする。
私と高瀬。
どっちが最低だなんて……
言わなくてもハッキリしている、はず………。