彼の瞳に捕まりました!


「こんな所で、無駄口叩いてるお前にそんな事言えるとはね」

さっきまでの冷たい声が、頭上から響いた。

ハッとして、前に立つ高瀬を見つめると、彼はゆっくりと口を開いた。

「あ、そうか、この間の件で雑用係りになったんだっけな。
新人は立派に原稿書いてるのになあ」

感情のない瞳。
そんな高瀬に、サトコちゃんの顔がみるみる内に真っ赤に染まった。

「お邪魔しましたっ!!」

甲高い怒鳴り声をあげ、彼女は扉を乱暴に閉めながら部屋を出ていった。

「やっと、静かになった」

高瀬は、そう呟くと作業台へと足を向けた。
先ほどのファイルの中を丁寧に取りだすと、

「これか?」

と、赤が沢山の原稿を差し出した。

「あ、うん。
ありがとう」

原稿を受け取り、もう一度確認する。
それは間違いなく、さっき編集長からだめ押しされた原稿で、ホッと息をついた。


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