彼の瞳に捕まりました!
原稿チェックの約束を取り付けた後で、社長から送られてきた、ビストロまでの地図のファックス。
手帳に挟んでおいたそれを取り出して、確認する。
最寄り駅は次の駅。
商業施設の立ち並ぶ大きな出口とは反対側の小さな出口。
その出口から、徒歩で20分程の場所。
“看板は目立たないから、注意して歩いて下さいね”
と、手書きの文字で地図の隅に書かれてあった。
その文字を目で追いながら思う。
この文字が社長の直筆だとしたら
私のような一介の編集者に対してまで、こんな丁寧な対応する。
老舗ならではのきめ細やかな心配りに、ただただため息が出てくるばかりだった。