彼の瞳に捕まりました!


その言葉に言われたまま椅子に座り直す。

「先にお食事をどうぞ」

「え?」

「さぁ、冷めないうちに」

そう言いながら差し出されるお皿。
その上には綺麗に盛り付けられた、オードブルとサラダ。

「あの?」

訳がわからず、戸惑う私に、社長はテーブルにお皿を置きながら、食事の説明を始めた。

「本日のオードブルは、ノルウェー産のサーモンと、ホタテのマリネ。サラダの盛り合わせになります」

「あ、あのっ……社長?」

「説明は、お食事の後で」

微笑みを絶やす事なく、社長はそれだけ言うと頭を下げ、厨房へと戻って行く。

残されたのは、オードブルのお皿と状況が飲み込めずに、一人焦る私。
そんな私に、先程の初老の男性が話しかけた。

「申し訳ございません。麻生様」

「えっと、あのっ、どういう事なんでしょうか?」

「詳細は浅川本人からときつく言われております。麻生様、大変申し訳ありませんが、しばらく浅川のわがままにお付き合い頂ければと思います」

そう言って、深く頭を下げる彼に言葉を出す事ができなかった。


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