魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
協力を無事取り付け、城を後にしようと正門へと向かうと、ダリアンが追いかけてきた。


「待ってください!グラースは…俺のことは何も言っていませんでしたか?」


「いえ、特には。ええと、お兄様ですよね?もしかしてクリスタルパレスについてこようとは思っていないでしょうね?」


図星を突かれた、といったようにぎくっとした精悍な顔立ちの凛々しい長身の男は、唇を噛み締めて拳を震わせた。


「俺が…ここから追い出したようなものなんです。俺は…グラースに戻って来てほしくて…」


「それはないと思いますよ。グラースの願いは、あなたが王位を継いで国を良き道へと導くこと。あなたが心配しておられたことは伝えておきましょう」


「ま、待ってください!」


なおも引き留めようとするダリアンを振り返ることなくオーディンが歩き出すと、ローズマリーが小走りについて来ながら忍び笑いを漏らした。


「グラースったら…愛されてるわねえ」


「血の繋がりもなく、普通の男女として出会っていたならば…結ばれていたかもしれませんねえ。今頃グラースはくしゃみをしているでしょうね」


――そして2人が噴水のある中央の広場へと着いた頃…ケルベロスは何故か子供たちに大人気になっていて、背中にはわらわらと子供たちが乗っかっていた。


『がおー、食ってやるぞー!』


…半ば冗談とも思えない冗談で吠え声を上げど、尻尾はぶんぶん振られている。

牙も向かず、子供たちの玩具になってやっているケルベロスに笑みを誘われながらも、持ってきたビラを手にしている住民たちがにじり寄ってきた。


「あの王国はもう駄目だと思っていたんだが…」


「いえ、今氷を溶かしている最中です。半年以内に住める土地に戻りますよ。移住を希望する方にはすぐに家を用意します。見学会も予定していますから日程が決まればまたお知らせに参りますよ」


オーディンとローズマリーが笑顔を振りまくと、ビラの下の方に名を連ねているゴージャスな面々に皆が息巻き、2人は手ごたえを感じた。


「いい感じね」


「ええ、コハク様に良いご報告ができそうです」


その頃魔王は…


ラスのお尻に夢中になっていた。
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