魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
内心複雑だった。

レイラはともかく、エリノアとスノウは実際コハクに抱かれ、それを知らされたのは…コハクと結ばれた後。

あの時も複雑だったけれど、今目の前で満面の笑みでコハクに微笑みかける彼女たちは、再会の喜びに輝き溢れていた。


「手を貸してやるから降りて来い。脚滑らせるなよ」


「はい…!」


ラスを下ろし、コハクの手を取ったエリノアたちは本当に嬉しそうで、ラスは1歩1歩ゆっくり後ずさりしながら室内へと戻り、ラスから常に視線を外さないコハクはすぐにそれに気付き、声をかけた。


「おいチビ、どこ行くんだよ。離れんなって」


「え、ううん、コーが大変そうだから…私食べてる」


「ラス王女、お久しぶりですね。あなたの誕生日以来だわ」


「スノウ…うん、また会えて嬉しい。…コーに会えて嬉しい?」


テーブルにつき、自身の身体を抱きしめながら尋ねてみると、巻き毛の黒髪が美しいスノウは真っ赤な唇を妖艶に上げてバルコニーのコハクを見つめた。


「ええ、とても嬉しい。いつかまたお会いできると思っていたから」


「…うん。私…着替えてくる」


ラスがクローゼットを開け、ベルラインの淡い水色のドレスを掴むと部屋を出て行こうとしたので、コハクが小走りに室内に戻り、ラスの手を掴んだ。


「チビ?着替えなら俺が…」


「ううん、コーはみんなのお相手をしてて。私…こんな姿で恥ずかしいから。じゃあもう行くからっ」


「チビ、待てって!なあ、俺のこと信じるって言ったろ?な?お前らちょっと待ってろ。チビを着替えさせてくるし」


――相変わらずラス一筋で…ラスしか目に入っていないコハクの様子を、スノウたちは想像し、覚悟をしていた。

馬車でここにたどり着くまでの間、車内でどうやってコハクと…ラスたちと出会い、どうやってコハクに愛されたか…それを全て打ち明け、互いを慰め合っていたのだ。


今目の前でコハクがラスを抱っこしてラスを笑わせようと躍起になっているのも容易に想像でき、それを笑って交わそうと約束し合ったのだ。


「どうぞごゆっくり」


ラスとコハクが結婚しようと関係ない。

コハクと会えただけで、幸せ。

傍に居れるだけで、幸せ。
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